全もくじ
アイスクリーム屋さんの店長は32歳処女
2話「真理、着替えを見られる」
郁夫が着任してから数日後。
開店準備から入る朝のアルバイトが明日急用で休むことになり、他のアルバイトに連絡して代わりをお願いしても、どうしても都合が合わなくて、シフトに空きが出来てしまった。
朝、一人で準備しなければならなくなった真理は、仕方なく郁夫へ手伝えないかと連絡を入れた。
連絡を受けた郁夫は、手伝いへ入ることもエリアマネージャーの仕事だから、快く承諾する。
その日、天気が良く晴れ、予想外なことに店が忙しくなった。
アイスクリームの在庫が少なくなったのもあれば、切らしたアイスクリームもあった。
翌日―――
真理は在庫を無くしたアイスクリームを作るために、いつもより一時間早く店へ向かった。
郁夫も、昨夜の内に在庫切れの連絡を受けたから、真理と同じ時間に店へ向かうつもりだったが寝坊した。
店の開店時間は、朝十時。
朝八時に店へ入り、切らしたアイスクリーム作る予定だから、急げば間に合う。
郁夫は慌てて家を飛び出し、急ぎ、店へ向かった。
真理は、郁夫も同じく一時間早く来るとのことだから、郁夫が店に着く前に鍵を開ける必要があるため、郁夫よりも早く店へ出勤していた。
それから、会社の規定で着替える必要があるため、着替える。
物音がピタリともしない狭い事務所の一画にあるカーテンだけで隔てた更衣室。
アイスクリームのイメージにピッタリな淡い水色のブラウス型の制服へ着替えるため、私服を脱ぎ始めた。
郁夫は寝ぐせを付けたまま、急ぎ店へ向かったため、どうにか予定していた時間へ間に合い、裏口から狭い事務所へ入ると、事務所から続くアイスクリームを仕込む部屋の電気がついていた。
てっきり、真理がもうアイスクリームを作りを始めていると思い、郁夫も着替えないといけないから、更衣室のカーテンを勢いよく開けた。
「え!?」
更衣室は狭い事務所の一画に狭い空間で設置されているため、カーテンだけで仕切られており、普段はカーテンを開けていて、着替える場合のみカーテンを閉めるルールになっている。
はずなのに…
どうして…
真理が振り向くと、郁夫の顔があった。
「「 あっ!? 」」
郁夫は誰も入っていないと思ってカーテンを開けた先に、真っ白な素肌と爽やかな淡い黄色のブラジャーが目に入り、驚きのあまり立ちすくんでしまった。
真理と郁夫、お互いが驚いた顔で目と目が合う。
「ごめん!」
真理は突然の出来事に訳わからなくなって、顔が紅く染まり、大きな胸を両腕で隠した。
「はっ! ごめん!
急いで来たから、気付かなかった」
郁夫も間違ってカーテンを開けたことを謝りながらも、ついスケベ心を出してしまい、下着姿の真理をつま先から頭の天辺まで見納めた。
真理は目を丸くして驚いている郁夫の顔から、急いで来たとわかったけど、どさくさに紛れてジッと胸を凝視しているように見えた。
「いくおくん!」
「あっ! ごめん!」
郁夫は、一瞬だけど下着姿の真理を見られたことを嬉しく思いながら、カーテンを閉めた。
真理は、一瞬の出来事だったけど、こういう場面に慣れていない。
カーテンが閉まっても、カーテンのすぐ向こうに郁夫がいると思うと、緊張して胸がバクバク跳ね上がる。早く制服を着ようとするも、手が震えてなかなか袖が通らない。
やっとの思いで袖を通しても、今度はボタンが閉じられない。
「真理ちゃん、ごめんね!」
「・・・・・・・・・・」
真理の返事がない。
下着姿を見られて怒っているのだろうか。
郁夫は気まずい雰囲気になったと感じ、何度も謝っていた。
郁夫が何度も謝っても、真理は初めて男性に下着姿を見られて、どう返事したら良いのか、わからない。しかも、初恋の郁夫だからこそ、尚更、答えに困ってしまう。
それでも、何か返事しないと、と気を焦らせるものの、着替えをしているのに、郁夫がカーテンの向こうから謝り続け、気配を強く感じるから、益々恥ずかしくなって返す言葉が出てこない。
返事が返せない真理にできることは、早く着替えを終わらせて、更衣室から出ることだった。
震える指先で最後のボタンをやっとの思いで閉じることができた。
真理は頬を紅く染めたまま、カーテンを開け
「もう、大丈夫…
終わったよ…」
と、更衣室から出た。
郁夫は、真理が怒ってないことに胸を撫で下ろし、また一言謝ってから更衣室へ入った。
(真理ちゃん、どうして怒っていないのに返事しなかったのだろう…
そんなに恥ずかしかったのかな… 顔を紅く染めたままだったし…
やっぱり、そうかな…
いや… 年齢的に考えると…
でも、まぁ、透き通るような真っ白な肌が見れたし、見た目以上に大きいおっぱいも見れたから、良しとしよう)
真理は恥ずかしさを隠すため、郁夫の着替えを待たずに、仕込み室へ入り、作業を開始した。
昨日、切らしたアイスクリームは期間限定、季節のアイスクリームなど数種類。
昨夜、注文したフルーツは、既にたくさん届いている。
皮むき無しで、そのまま丸ごとジューサーへ入れ、ジュースにしてから裏ごしをして、余分な繊維や種を取り除いてから、アイスクリームマシンへ入れて作っていくものあるが、種の大きさによっては、しっかりカットしてからジューサーへ入れるフルーツもあって、こちらの手間がかかる。
在庫を確認しながら仕込みの順番を組み立て、準備していると、着替えを終えて身だしなみも整えた郁夫が仕込み室へ入ってきた。
「下着姿見ちゃって、本当にごめんね」
真理は聞き慣れない『下着姿』という破廉恥な一言で、一瞬立ち止まってしまい、郁夫と二人きりになる時間があるから、何となくお気に入りの下着を着けて来て良かったと思うものの、誰にも見せたことも無い、裸同然とも言える下着姿を見られたと思い返すと、ようやく冷めてきた顔が、また熱くなって紅く染まってしまった。
もう、忘れて欲しい。
「も、も、もう、だ、大丈夫だよ。
な、な、何回も、あ、あ、謝らなくても平気だから。
ちょ、ちょ、ちょっと見られただけだから…」
32歳とは思えないほど顔を紅く染め、言葉を詰まらせる真理。
そんな真理に郁夫は下心が揺らぎ、確かめたいこともあって揶揄ってみる。
「ちょっと見ただけでも、おっぱい大きいの分かったし、清楚な淡い黄色のブラジャーが良く似合っていて、キレイだったよ」
立て続けに『おっぱい』『ブラジャー』『綺麗』と男の人から面と向かって言われ、顔が沸騰するほど熱くなり、返す言葉が出てこない。
誤魔化すように、段ボール箱に入っているフルーツを取り出した。
郁夫はそのまま制服が良く似合う真理の淡い水色のブラウスに黒のキュロットスカート、そして白色を基調とした薄ピンクのストラップ柄のエプロンを掛けた姿を凝視する様に眺め、嫌らしい微笑みを浮かべる。
「制服を着ると、あまりおっぱい大きく見えないね。
エプロンの所為かな?」
郁夫が胸を見つめながら、見せたことが無い嫌らしい微笑みを見せ、『おっぱい』と言ってくるから、たまらず腕を組んで胸を隠す。
「そ、そ、そ、そんなことないよ…」
「いやいや。
そんなに否定しなくても、充分におっぱい大きいから」
胸を隠している姿をニヤリと微笑みながら、見つめる郁夫。
郁夫が胸を見つめながら、破廉恥な言葉をストレートに言ってくる所為で、真理は耐えきれなくなるほど恥ずかしくなり、また顔を紅く染めたまま黙ってしまった。
「・・・・・・・・」
32歳とは思えない動揺した様子。
それでも、嫌がっているようには見えないから、そのまま胸の話題を続け、確かめる。
「そっか。たぶん、真理ちゃんは他の女性のおっぱい見たことがないから、分からないんだね」
「そ、そ、そ、そんなことない、よ…」
段ボール箱から取り出したフルーツを皮むきしながら、そうではないと誤魔化す。
「じゃあ、何カップ?」
「はぃ!?」
真理は32歳になっても、男性と全く下ネタを話した経験がない。
素直に答えた方が良いのか、誤魔化した方が良いのか、返答に困ってしまい、動揺してしどろもどろになってしまう。
そんな様子の真理に、下心をくすぐられた郁夫が横に並び
「俺が当てて見よう」
と、動揺して、うろたえている真理の胸を見つめながら
「ズバリ、Eカップ!」
と、言い当ててきた。
「え!?」
真理は本当に当てたと驚き、皮むきしていたフルーツをまな板の上へ落としてしまった。
「おっ!
その驚いた様子、当たりだね!
真理ちゃんと付き合っている彼氏が羨ましいな~」
郁夫が嬉しそうに目をギラギラ輝かせながら、鎖骨が少しチラッと見える胸元をチラチラ覗いてくる。
真理は胸を覗かれているような気がしたから、ボタンをそっと閉じ
「ち、ち、ちがう…」
と、もじもじ恥ずかしさを隠すように、フルーツの皮むきを続けて誤魔化す。
「アハハ…
真理ちゃん、本当に言い当てられて、恥しがっているところ可愛いな~
可愛いから、もう一度見てみたいな~」
郁夫は恥しがっている真理をさらに恥かしめる一言を言い、32歳とは思えない初心《うぶ》な反応を見せる真理を楽しみ、一人うんうんと頷きながら、前から思っていたことが確信へと変わった。
真理は、未経験者。
処女だろうと。
郁夫は既婚者。その一方で、スケベでモテる男でもあった。
その経験値から、一人でも男性とお付き合いしたことがある女性なら、怒りながらも恥ずかしがることはあったが、まるで何も知らない高校生のように、おろおろして恥ずかしがる大人の女性は見たことがなかった。
30代女性ともなれば、どこか吹っ切れた素振りも見せてくる。しかし、真理はそうではない。
「・・・・・・・・・」
真理は照れ隠すようにエプロンをかけ直し、俯いたままフルーツの皮むきをして、アイスクリームの仕込みをしている。
郁夫は確信を確かめるためにも真理の手伝いをしながら、その様子をジッと観察する。
学生の時から変わらない面影を残し、清楚感を感じさせる綺麗な顔立ち。
色白で滑らかなキレイな肌。
長い髪を結んだお団子頭。
細い首からは、色っぽいうなじが見え、エプロンの腰紐をしっかり結んでいるおかげで、魅力的な身体の凹凸ラインがくっきりと浮かび上がり、横から覗けば、胸の大きな膨らみが一目瞭然。大きくふっくらした大きな胸に対して、スラっと細い線の腰。誰が見てもスタイルが良いと分かる。
下心がそそる熟れた身体だ。
真理は学生の時、何気に隠れて人気があった大人しい子で、郁夫も好意を抱いていた。
その真理が32歳になっても、まだ処女だろうと思われるその熟れた身体はどうなっているのだろう。
仕込みをしている真理の様子を見つめながら、真理の身体を想像していると、下半身の棒亀がムクっと大きくなり、股間の山を作ってしまう。
しかし、エプロンをしているから見られることはない。
今も処女を守っている真理が中学生の時、郁夫に好意を持っていたと、郁夫も中学生の時に気付いていたから、今はどうなのだろうと、確かめるために、まだ頬を紅く染めたまま、黙って仕込みをしている真理のすぐ隣にそっと並び立ち、郁夫もフルーツの皮を剥いたり、切ったり手伝いをしながら、真理の様子を観察した。
「さすが真理ちゃん。細い腕なのに仕事が早い」
横に並んでいる郁夫の距離がやけに近い。
体温が伝わってくるほど、距離が近い。
初恋の郁夫だからか、それとも、こんなに近い距離まで男性の側へ寄ったことが無いからか、胸がドキドキバクバク飛び出しそうなくらい跳ね上がって、集中しないと手を切ってしまいそうになる。
「・・・・・・・・・」
真理は集中して無言でいるが、顔を覗くと、まだ薄っすら頬が紅い。
わざと近づいた距離だから、照れているのか。
それを確かめるために、さり気なく腕と腕をくっつけてみた。
(わぁ!
郁夫君の腕…
どうしよう…)
真理は急に触れてきた筋肉質の硬い腕にビクッと驚きながらも、どう応じて良いのか分からず、黙ったまま作業を続けた。
(やっぱり、腕をくっつけただけじゃ、わからないな…)
真理は、近すぎる距離が恥ずかしくて、ドキドキ緊張していた緊張が、ずっと郁夫を見つめていたあの頃のようなときめきに変わり、大好きだった郁夫が恋人のように傍にいると思うと、心が弾み、嬉しく思えるほどに、心変わりしてきた。
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アイスクリーム屋さんの店長は32歳処女
2話「真理、着替えを見られる」
郁夫が着任してから数日後。
開店準備から入る朝のアルバイトが明日急用で休むことになり、他のアルバイトに連絡して代わりをお願いしても、どうしても都合が合わなくて、シフトに空きが出来てしまった。
朝、一人で準備しなければならなくなった真理は、仕方なく郁夫へ手伝えないかと連絡を入れた。
連絡を受けた郁夫は、手伝いへ入ることもエリアマネージャーの仕事だから、快く承諾する。
その日、天気が良く晴れ、予想外なことに店が忙しくなった。
アイスクリームの在庫が少なくなったのもあれば、切らしたアイスクリームもあった。
翌日―――
真理は在庫を無くしたアイスクリームを作るために、いつもより一時間早く店へ向かった。
郁夫も、昨夜の内に在庫切れの連絡を受けたから、真理と同じ時間に店へ向かうつもりだったが寝坊した。
店の開店時間は、朝十時。
朝八時に店へ入り、切らしたアイスクリーム作る予定だから、急げば間に合う。
郁夫は慌てて家を飛び出し、急ぎ、店へ向かった。
真理は、郁夫も同じく一時間早く来るとのことだから、郁夫が店に着く前に鍵を開ける必要があるため、郁夫よりも早く店へ出勤していた。
それから、会社の規定で着替える必要があるため、着替える。
物音がピタリともしない狭い事務所の一画にあるカーテンだけで隔てた更衣室。
アイスクリームのイメージにピッタリな淡い水色のブラウス型の制服へ着替えるため、私服を脱ぎ始めた。
郁夫は寝ぐせを付けたまま、急ぎ店へ向かったため、どうにか予定していた時間へ間に合い、裏口から狭い事務所へ入ると、事務所から続くアイスクリームを仕込む部屋の電気がついていた。
てっきり、真理がもうアイスクリームを作りを始めていると思い、郁夫も着替えないといけないから、更衣室のカーテンを勢いよく開けた。
「え!?」
更衣室は狭い事務所の一画に狭い空間で設置されているため、カーテンだけで仕切られており、普段はカーテンを開けていて、着替える場合のみカーテンを閉めるルールになっている。
はずなのに…
どうして…
真理が振り向くと、郁夫の顔があった。
「「 あっ!? 」」
郁夫は誰も入っていないと思ってカーテンを開けた先に、真っ白な素肌と爽やかな淡い黄色のブラジャーが目に入り、驚きのあまり立ちすくんでしまった。
真理と郁夫、お互いが驚いた顔で目と目が合う。
「ごめん!」
真理は突然の出来事に訳わからなくなって、顔が紅く染まり、大きな胸を両腕で隠した。
「はっ! ごめん!
急いで来たから、気付かなかった」
郁夫も間違ってカーテンを開けたことを謝りながらも、ついスケベ心を出してしまい、下着姿の真理をつま先から頭の天辺まで見納めた。
真理は目を丸くして驚いている郁夫の顔から、急いで来たとわかったけど、どさくさに紛れてジッと胸を凝視しているように見えた。
「いくおくん!」
「あっ! ごめん!」
郁夫は、一瞬だけど下着姿の真理を見られたことを嬉しく思いながら、カーテンを閉めた。
真理は、一瞬の出来事だったけど、こういう場面に慣れていない。
カーテンが閉まっても、カーテンのすぐ向こうに郁夫がいると思うと、緊張して胸がバクバク跳ね上がる。早く制服を着ようとするも、手が震えてなかなか袖が通らない。
やっとの思いで袖を通しても、今度はボタンが閉じられない。
「真理ちゃん、ごめんね!」
「・・・・・・・・・・」
真理の返事がない。
下着姿を見られて怒っているのだろうか。
郁夫は気まずい雰囲気になったと感じ、何度も謝っていた。
郁夫が何度も謝っても、真理は初めて男性に下着姿を見られて、どう返事したら良いのか、わからない。しかも、初恋の郁夫だからこそ、尚更、答えに困ってしまう。
それでも、何か返事しないと、と気を焦らせるものの、着替えをしているのに、郁夫がカーテンの向こうから謝り続け、気配を強く感じるから、益々恥ずかしくなって返す言葉が出てこない。
返事が返せない真理にできることは、早く着替えを終わらせて、更衣室から出ることだった。
震える指先で最後のボタンをやっとの思いで閉じることができた。
真理は頬を紅く染めたまま、カーテンを開け
「もう、大丈夫…
終わったよ…」
と、更衣室から出た。
郁夫は、真理が怒ってないことに胸を撫で下ろし、また一言謝ってから更衣室へ入った。
(真理ちゃん、どうして怒っていないのに返事しなかったのだろう…
そんなに恥ずかしかったのかな… 顔を紅く染めたままだったし…
やっぱり、そうかな…
いや… 年齢的に考えると…
でも、まぁ、透き通るような真っ白な肌が見れたし、見た目以上に大きいおっぱいも見れたから、良しとしよう)
真理は恥ずかしさを隠すため、郁夫の着替えを待たずに、仕込み室へ入り、作業を開始した。
昨日、切らしたアイスクリームは期間限定、季節のアイスクリームなど数種類。
昨夜、注文したフルーツは、既にたくさん届いている。
皮むき無しで、そのまま丸ごとジューサーへ入れ、ジュースにしてから裏ごしをして、余分な繊維や種を取り除いてから、アイスクリームマシンへ入れて作っていくものあるが、種の大きさによっては、しっかりカットしてからジューサーへ入れるフルーツもあって、こちらの手間がかかる。
在庫を確認しながら仕込みの順番を組み立て、準備していると、着替えを終えて身だしなみも整えた郁夫が仕込み室へ入ってきた。
「下着姿見ちゃって、本当にごめんね」
真理は聞き慣れない『下着姿』という破廉恥な一言で、一瞬立ち止まってしまい、郁夫と二人きりになる時間があるから、何となくお気に入りの下着を着けて来て良かったと思うものの、誰にも見せたことも無い、裸同然とも言える下着姿を見られたと思い返すと、ようやく冷めてきた顔が、また熱くなって紅く染まってしまった。
もう、忘れて欲しい。
「も、も、もう、だ、大丈夫だよ。
な、な、何回も、あ、あ、謝らなくても平気だから。
ちょ、ちょ、ちょっと見られただけだから…」
32歳とは思えないほど顔を紅く染め、言葉を詰まらせる真理。
そんな真理に郁夫は下心が揺らぎ、確かめたいこともあって揶揄ってみる。
「ちょっと見ただけでも、おっぱい大きいの分かったし、清楚な淡い黄色のブラジャーが良く似合っていて、キレイだったよ」
立て続けに『おっぱい』『ブラジャー』『綺麗』と男の人から面と向かって言われ、顔が沸騰するほど熱くなり、返す言葉が出てこない。
誤魔化すように、段ボール箱に入っているフルーツを取り出した。
郁夫はそのまま制服が良く似合う真理の淡い水色のブラウスに黒のキュロットスカート、そして白色を基調とした薄ピンクのストラップ柄のエプロンを掛けた姿を凝視する様に眺め、嫌らしい微笑みを浮かべる。
「制服を着ると、あまりおっぱい大きく見えないね。
エプロンの所為かな?」
郁夫が胸を見つめながら、見せたことが無い嫌らしい微笑みを見せ、『おっぱい』と言ってくるから、たまらず腕を組んで胸を隠す。
「そ、そ、そ、そんなことないよ…」
「いやいや。
そんなに否定しなくても、充分におっぱい大きいから」
胸を隠している姿をニヤリと微笑みながら、見つめる郁夫。
郁夫が胸を見つめながら、破廉恥な言葉をストレートに言ってくる所為で、真理は耐えきれなくなるほど恥ずかしくなり、また顔を紅く染めたまま黙ってしまった。
「・・・・・・・・」
32歳とは思えない動揺した様子。
それでも、嫌がっているようには見えないから、そのまま胸の話題を続け、確かめる。
「そっか。たぶん、真理ちゃんは他の女性のおっぱい見たことがないから、分からないんだね」
「そ、そ、そ、そんなことない、よ…」
段ボール箱から取り出したフルーツを皮むきしながら、そうではないと誤魔化す。
「じゃあ、何カップ?」
「はぃ!?」
真理は32歳になっても、男性と全く下ネタを話した経験がない。
素直に答えた方が良いのか、誤魔化した方が良いのか、返答に困ってしまい、動揺してしどろもどろになってしまう。
そんな様子の真理に、下心をくすぐられた郁夫が横に並び
「俺が当てて見よう」
と、動揺して、うろたえている真理の胸を見つめながら
「ズバリ、Eカップ!」
と、言い当ててきた。
「え!?」
真理は本当に当てたと驚き、皮むきしていたフルーツをまな板の上へ落としてしまった。
「おっ!
その驚いた様子、当たりだね!
真理ちゃんと付き合っている彼氏が羨ましいな~」
郁夫が嬉しそうに目をギラギラ輝かせながら、鎖骨が少しチラッと見える胸元をチラチラ覗いてくる。
真理は胸を覗かれているような気がしたから、ボタンをそっと閉じ
「ち、ち、ちがう…」
と、もじもじ恥ずかしさを隠すように、フルーツの皮むきを続けて誤魔化す。
「アハハ…
真理ちゃん、本当に言い当てられて、恥しがっているところ可愛いな~
可愛いから、もう一度見てみたいな~」
郁夫は恥しがっている真理をさらに恥かしめる一言を言い、32歳とは思えない初心《うぶ》な反応を見せる真理を楽しみ、一人うんうんと頷きながら、前から思っていたことが確信へと変わった。
真理は、未経験者。
処女だろうと。
郁夫は既婚者。その一方で、スケベでモテる男でもあった。
その経験値から、一人でも男性とお付き合いしたことがある女性なら、怒りながらも恥ずかしがることはあったが、まるで何も知らない高校生のように、おろおろして恥ずかしがる大人の女性は見たことがなかった。
30代女性ともなれば、どこか吹っ切れた素振りも見せてくる。しかし、真理はそうではない。
「・・・・・・・・・」
真理は照れ隠すようにエプロンをかけ直し、俯いたままフルーツの皮むきをして、アイスクリームの仕込みをしている。
郁夫は確信を確かめるためにも真理の手伝いをしながら、その様子をジッと観察する。
学生の時から変わらない面影を残し、清楚感を感じさせる綺麗な顔立ち。
色白で滑らかなキレイな肌。
長い髪を結んだお団子頭。
細い首からは、色っぽいうなじが見え、エプロンの腰紐をしっかり結んでいるおかげで、魅力的な身体の凹凸ラインがくっきりと浮かび上がり、横から覗けば、胸の大きな膨らみが一目瞭然。大きくふっくらした大きな胸に対して、スラっと細い線の腰。誰が見てもスタイルが良いと分かる。
下心がそそる熟れた身体だ。
真理は学生の時、何気に隠れて人気があった大人しい子で、郁夫も好意を抱いていた。
その真理が32歳になっても、まだ処女だろうと思われるその熟れた身体はどうなっているのだろう。
仕込みをしている真理の様子を見つめながら、真理の身体を想像していると、下半身の棒亀がムクっと大きくなり、股間の山を作ってしまう。
しかし、エプロンをしているから見られることはない。
今も処女を守っている真理が中学生の時、郁夫に好意を持っていたと、郁夫も中学生の時に気付いていたから、今はどうなのだろうと、確かめるために、まだ頬を紅く染めたまま、黙って仕込みをしている真理のすぐ隣にそっと並び立ち、郁夫もフルーツの皮を剥いたり、切ったり手伝いをしながら、真理の様子を観察した。
「さすが真理ちゃん。細い腕なのに仕事が早い」
横に並んでいる郁夫の距離がやけに近い。
体温が伝わってくるほど、距離が近い。
初恋の郁夫だからか、それとも、こんなに近い距離まで男性の側へ寄ったことが無いからか、胸がドキドキバクバク飛び出しそうなくらい跳ね上がって、集中しないと手を切ってしまいそうになる。
「・・・・・・・・・」
真理は集中して無言でいるが、顔を覗くと、まだ薄っすら頬が紅い。
わざと近づいた距離だから、照れているのか。
それを確かめるために、さり気なく腕と腕をくっつけてみた。
(わぁ!
郁夫君の腕…
どうしよう…)
真理は急に触れてきた筋肉質の硬い腕にビクッと驚きながらも、どう応じて良いのか分からず、黙ったまま作業を続けた。
(やっぱり、腕をくっつけただけじゃ、わからないな…)
真理は、近すぎる距離が恥ずかしくて、ドキドキ緊張していた緊張が、ずっと郁夫を見つめていたあの頃のようなときめきに変わり、大好きだった郁夫が恋人のように傍にいると思うと、心が弾み、嬉しく思えるほどに、心変わりしてきた。
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